「久しぶりの学校だね」
「あぁ 妙な感じだぜ・・・」
「ふふっ・・・」
「何だよ気味悪りぃな」
「だって・・・ 変な感じでしょう? 将臣くんとまた普通に高校生活だなんて・・・」
「だなんて? 嫌なのか」
「・・・っ 嫌なわけないでしょ! ・・・・・信じられないんだよ・・・っ あんなに長く向こうにいて・・・
こっちに戻ったらどうなってるか不安で・・・・・」
ポンポンッと、将臣は望美の頭を撫でてやる。
「・・・そう・・・だな・・・ 俺も正直帰ってこれるとも思ってなかったし、元に戻れるのかも少し不安だったしな」
「・・・・・うん」
それにしても・・・ 向こうに慣れすぎたなぁ・・・と将臣が言った事に、確かに・・・と望美も思った。
「あんなに二人して遅刻ギリギリだったのにな」プッと、其の事を思い出したのか笑った将臣に
「あ、ちょっと! 私まで遅刻者扱いしないでくれる?! 将臣君起こすのに時間掛かってたんじゃない!」
もぅっと、ぶうたれる。
そう、他の者からすれば何時もの変わらぬ学校への通学途中なのだろうが、
二人にとっては、異世界から帰ってきてから初めての登校日。
何時もは遅刻ギリギリな二人が、今日は譲が出かけた直ぐ後を追いかけている形だ。
「歳食った訳じゃないよなぁ・・・」 何て言われると怖くなる。
確かに異世界に行ったはずだが、戻ってきたのは光に包まれたあの直後の時。
しかし将臣にとっては四年以上、望美に至っては・・・ 考えるだけで恐ろしいくらいの時間をあちらで過ごしていた。
(そうだよ 私全然気にしてなかったけど、向こうで何度季節を巡ったんだろう・・・
それは将臣君以上に向こうに居たんじゃ・・・)
「・・・っ ぃったー ちょっと、何するの!?」
悩ましい顔になっていた事に気付かれ、将臣はでこピンをしてきた。
「お前がどっか遠く行き過ぎてるからだよ」
其の言葉にはてなマークが浮かんだが、
今ここであの時の時間の流れを考えたところでしょうがないのは確かだった。
「あーでも・・・やばいなぁ」
「何が」
「何となく古文とかは、覚えてるというか理解したから良いけど、英語とか化学とか相当抜け落ちてるよぉ・・・」
少し半泣きになる。
それも其のはず、そろそろクリスマスという時期に戻ってきたので、期末テストまで日にちがない。
テストの点数が目に見えてやばいだろうと思っている。
「あぁ・・・ そう言えばそうだなぁ〜 まーなんとかなるんじゃね?」
「もぅっ! 将臣君は要領良いから良いけど、私何時も点数ギリギリだもの」
「今更しょうがねーだろ 当たって砕けろ! って、戦してた時でも思い出してガンバりゃ何とかなるだろ」
「もぅ・・・楽観的だなぁ・・・ 一夜漬けで頑張るしかないかぁ・・・」ちょっと泣きたくなった。
「どうせこの時間から行くんだ。 HR前まで少し教えてやるよ」其の言葉に、望美はパァッと顔は明るくなった。
「やったー 将臣殿有難き幸せに御座います」 ハハーと、お代官様にでもひれ伏すポーズをしてみせる。
「ハッハッハッ 苦しゅうない」 と、何時も通り悪乗りに合わせてくれるのが、なんだか心地良い。
「ま。 どうせ暫くは起きるのかわらねーだろうしなぁ」
「はは・・・ 全くだね・・・」
平泉で、皆四時には既に起きていた。
何時も遅いと言われていても、皆の三十分後には何とか起きていた自分も、頑張っていた方じゃないのだろうか・・・
平家に居たころなんて、朝三時起きだぜ?昼寝もしたくなるさな と、悪態をつく将臣。
「えっ! そんなに早いの!? もしかして銀、其の時間から起きてるの・・・?!」
「さぁ そりゃー本人に聞いてみないとな」
「・・・・・ 帰ったら聞いてみる・・・」
そんな他愛無い話をしながら歩みを進める。
「それにしても・・・」
「ん? どうしたの?」何か変な物でもあった? と、将臣を見上げていぶかしむ。
「歩くのも速くなったよなぁ」
「・・・・・」
確かに、何時もよりも半分もしない時間で学校が見えるところにまで来ている。
「今時の女子高生に戻れるかな・・・」
ポツリと呟いた言葉に、将臣はツボに入ったらしく盛大に大笑いした。
そんな至福を噛締めた朝の一時。
後日談
クラスメイトが、何時もは遅刻常習犯並みの二人が、
一番乗りで教室に居たのを発見して色々と噂になったのは、言うまでもない。
2013.9.15
後記
何だかんだで、この幼馴染好きですね〜 兄貴って感じな将臣好きです
帰ってきた翌日のお話