※なるべくこの作品は、『現代1』を読んだ後に見て戴けると有難いです。




「兄上。 何かやらかしたのですか?」
「何で俺が何かやらかさなくちゃなんねーんだよ」知盛じゃあるまいし・・・と、ブツブツ文句を言う。

「そんな事より、先ずは目の前の片付けるか」
「手出ししてよろしいので?」
「良い言葉を教えてやるよ。 正当防衛ってな。
 自分の身の安全のためには、多少の喧嘩は多めに見てくれるんだぜ」
「では・・・ 気絶させる程度にしておけば、よろしいのですね」
「理解が早くて助かる」




【二人歩き】



珍しく、将臣と銀は二人で出かけていた。
あちらの世界に帰る事での作戦会議や、必要なものについて色々と博物館などを観に来ていたのだ。
望美は他に用があったので、一緒は出来ないとしょげていた。


重衡は、九州の方へと目を付けそちらへ望美と今後住まおうと画策していた。
一方、将臣は南の島だ。 沖縄ではないが、九州からであれば幾分近いであろう。
流通などの事を考えるのも良いかも知れないと、色々と相談していた。

そして、主食や主力的な作物の製造や知識、なるべく簡単な物で代用出来る物がないかと
歴史資料館へも足を運んでいた。

何だかんだとやる事を考えると、遣り甲斐が出てくる。
重衡とああでもない、こうでもないと、色んな案を出し合うのは面白い。



人通りの多い大通りを歩いていたが、華やかさと精悍さを持ち合わせる二人に目を向ける者は多かった。
だからなのだろうか、暫く歩いていると後ろに妙な違和感を覚えた。

銀は、ちらりと後ろを盗み見ると数人の少々柄の悪そうな者が距離を取りながら後ろを着いてきていた。


そして、冒頭に至る。



二人は少し狭い路地へと歩みを進め、速度を緩める。

それを見定めて追ってきていた者が、急に二人の元へ歩み寄り取り囲んだ。

「お前達は何だ?」
臆することなく将臣は、取り囲み始めた者たちに話掛けた。
「お前らがむかついたもんでね。」

「・・・・・・は?」間抜けな声を、銀は漏らす。

「その顔と良い態度といい。 ムカつくんだよ!」
その言葉に将臣と銀は顔を見合わせ、二人同時に溜め息をついた。
「人の造形にとやかく言われても・・・なぁ・・・?」
「そうですね」

「うるっせぇ! その顔歪めてやる! やっちまえ!」
その言葉を合図にチンピラ達は、 『おぉ!!!』 と威勢の良い声を上げ、二人に殴りかかってきた。


「ったく面倒だなぁ・・・」
「こちらの世界でもこの様な事があるのですね」
「・・・よくあったのか? こういう事・・・」
「ご想像にお任せ致します」
ニコリと微笑んで将臣に言葉を返したりと、二人はのん気に話していた。

「余所見すんな!!!」

「だ、そうですよ」
殴りかかって来た一人をさらりと交わしながら、銀は将臣に言った。

「へーへー 向こう様から殴りこんで来たからな。俺達は正当防衛、だ」
「はい」
銀は微笑むと、ナイフを持ってこちらに向かって来た者の手首を掴み捻りあげる。
「すみません」 そう言って、胸に肘鉄を入れた。
「ぐぁっ・・・」 と、情けない声を上げて相手は横たわった。

将臣は、殴って来た相手の背後に素早く回り、背中を足蹴りする。

「お前、急所って知ってるか?」
「いえ。 薬師では御座いませんので。 死なない程度の事しか出来ません」
にっこりと、将臣に満面の笑みを返す。
「・・・嘘くせぇ・・・」
なんて、二人でのんびりと話しながら喧嘩を続ける。

そんな会話に臆した者も居たようで、逃げ出す者も出始めた。




「で・・・まだやんのか?」
と、最初に威勢よく声をあげた者に話しかけると、腰を抜かしながら後退していた。


「帰るぞ」 
「はい」 その言葉に銀は頷き、二人は背を向け歩き出した。

その隙を突いて、腰を抜かしていた様に見せかけていた者が、背後から切りかかってきた。
 が、銀が見事な足蹴りを繰り出し、あっけなく地面へと寝転がった。
「ヒューゥッ 足技もお手のもんか すげーな」
「兄上程では」
そう言って、後ろを振り返る事も無く、二人はその場を後にした。




「動いたら腹減ったな」
「同感です」
「お前、全然動いてなかったじゃねーか」
「そうでしょうか? 数人お相手致しましたよ。 ですが、殺気が無い分楽でしたが・・・」
「動きに無駄がねーって話だよ。 ったく、こえーこえー 敵じゃなくてよかったぜ」
そしてまた、何事もなく歩き始めた二人だった。







2013.8.28

後記

現代でのハードボイルド風な物をこの二人で書きたかったんです・・・ キリッ